風景描写 〜初夏の日〜
あ。

風景描写。

足首ほどの深さの川には
この時期多くの人が集う
或る子どもは魚を追いかけ
或る男女は飛び石を渡り
或る老人は側で居眠りをする

風景描写。

一両編成の青い電車は
満員になることが殆どない
きっちり一時間に一本のペースで
かたことリズミカルな音で走る

風景描写。

子ども達の笑い声と男女の話し声
老人の軽いいびきと川のささやき
そこに金属の音が混じる
少し離れた鉄橋の上を走るのは
たった一両の青い電車
全てのものがしばし見入る

風景描写。

かたことと錆色の鉄橋を渡る
単調な眺めからひととき抜け出す
乗客はほんの少し窓の外に目をやる
遠く離れた下のほう
川べりで子ども達が大きく手を振る
電車からも笑顔で手を振り返す

風景が、重なる。

わずかばかりの時間
優しいひとときを
こころとこころの交わりを
人々はそっと感じる


自由詩 風景描写 〜初夏の日〜 Copyright あ。 2009-05-18 21:33:11
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