不透明な世界
緋月 衣瑠香

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/かなしい/おしらせ/です/
/あなた/を/この/あたま/から/しょうきょ/し/ます/
/さようなら/おげんき/で/

青いにおいが鼻につく
遠くに見える海が白い光を生みだしている
入学当初 デザインが気に食わなかった制服は
今では歩くサウナスーツとして私を悩ませる

/なつ/が/ちかい/の/です/

断線してしまって買い換えたイヤホンは
海が生み出すあの白と同じ色
だからその小さな穴からは かすかに波の音がする
でもその音よりもっと大きく聞こえるのは

/なつ/が/ちかい/の/です/

私の部屋で留守番をするパンダたち
君たちはこの冬に大活躍してくれたね
ありがとう
お蔭で風邪をひくことはなかったよ
大切に次の冬まで取っておかないと

/なつ/が/ちかい/の/です/

定期考査間近の満員電車
勉強する気なんて起こるわけなくて
なんとなく携帯電話に手をやる
いつも通り誰からも連絡はなし
保護してあるメールを読み返す
画面いっぱいに広がる君の

/なつ/が/ちかい/の/です/

もう私の中には春はいない
それなのにこの頭は
春の中にいたいと言う
記憶の中にいたいと言う

/なつ/が/ちかい/の/です/

捨ててしまいたいものがたくさんあるのに
私の頭は捨てることを許さない
無理矢理にでもすれば目の前のものがすべて海の白に見える
ほら、もう

/なつ/が/ちかい/の/です/

満員電車から解放された私は
汗を拭い遠くも近くもない潮の存在を感じながら
先へと急ぐ

/かなしい/おしらせ/です/
/あなた/を/この/あたま/から/しょうきょ/し/ます/
/しょうきょ/し/ます/
/しょうきょ/
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自由詩 不透明な世界 Copyright 緋月 衣瑠香 2009-05-16 18:35:48
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