初夏の逃げ道
亜樹

じりじりとあがる気温に耐えかねて
とうとう藤はにげてしまった
山の中に
まだどうにか残っている
冷ややかな空気と
無口な水を引き連れて

 5月の山の青です
 より一層涼やかな青です
 より高く
 より遠く
 ただただ上へと駆けてゆく
 夏の緑に
 覆い隠される前に

あれが藤です
初夏の逃げ道です
もうここにはおりませんが
あれが藤です
初夏の逃げ水です


自由詩 初夏の逃げ道 Copyright 亜樹 2009-05-15 23:33:45
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