海底杉並区2009
猫道

会社やめてぇーなー が染み付いたコピー機

あなたに会いたくて が染み付いた枕カバー

急げ が染み付いたサドル

知りたい が染み付いたマウスパッド

やりたいことがない が染み付いた学食の灰皿

でも、売れたい が染み付いたデモCD

目覚めたくない が染み付いた目覚まし時計

切れたらいい が染み付いたミサンガ

捨てたくない が染み付いたゴミ袋

入れないでくれ が染み付いたポスト

読まなくちゃ が染み付いた小説

手持ち無沙汰 が染み付いたグラス

リスペクト が染み付いたグラス

下心 が染み付いたグラス

やり場のない怒り が染み付いたグラス

なんでもない が染み付いたグラス

開けられない が染み付いたドアノブ

わくわく が染み付いたブーツ

後悔 が染み付いた万札

ずっと一緒にいられますように が染み付いた南京錠

何も聴きたくない が染み付いたヘッドホン

やってらんねー が染み付いたラッピング用紙

繋ぎ止めたい が染み付いたセロテープ

あげたくない が染み付いたヴィトン

ありったけの愛 が染み付いた明治の板チョコ




ピザのくせに ピザ喰いたいとか言いません
買い置きのコンドームは無駄に長持ち
寂しいを照らす液晶
誰にでも優しいティッシュペーパー
に 囲まれて

シャンプー コンディショナー ボディーソープ ハンドソープ
シェービングジェル ワックス コンタクト洗浄保存液 目薬
リップクリーム デンタルリンス……
それら薬液の消費と購入を繰り返し歳を食う
のが 悲しくて仕方ないので物語を創って聴かせましょう




それは深い深い海の底、杉並区の深遠にあるという海底杉並区に
潜っていった父の話で、ある日ぱったりと行方をくらました父が
ずいぶんと久しぶりに僕に絵葉書をよこしたことから話は始まります。


「今こちらでは大博覧会さ。もうすぐ20世紀も終わるからね。
 見世物小屋では古川ロッパさんが栃錦と長嶋をミキサーにかけて
 鳩にするなんて芸当を見せて子供たちを驚かせているよ。
 お前も早く来なさい。今まで秘密にしてたけど、家の応接間から
 抜け穴を掘ってあるんだ。」


消印は海底杉並区。
返事を書いたけれどもどこに出せばいいか分からない。
途方に暮れた僕はお台場で死んだクラゲの海を歩きながら浅瀬に葉書を溶かす。


「お父さん。だんだん顔を忘れていきます。そもそも僕にお父さんはいたのか。
 これは、恐ろしいことです。誰も探しに行けなくなる。」


という青いボールペンのインクがしみついたそれは、東京湾に染み付いて
なかったことになる。
物語が先に進まないじゃないかと一人つぶやいたその時、突如として水飛沫が上がり、
砂浜が盛り上がり、巨大な急行列車の突端が顔を覗かせる。
夜空を照らす黄色いライトはかぐや姫みたくキラキラと輝き、海底特急ミネルヴァ号
だとわかる。長い長い特急列車の車体は、鮮やかな光の筋をつくって、フジテレビを
突っ切り、あっという間に遥か彼方へと消えていきました。

切符はもっていなかったけど、それに乗ろうと握り締めていた絵葉書の消印は
海底杉並区。誘っておいて迎えに来ない父に恨み言を言うも届かず、
返事を溶かしても東京湾は黙りこくっている。

ハッとして原付飛ばして、ずいぶん足を踏み入れてなかった実家のリビングまで
55分間。飾ってあったミュシャのイミテーションの裏から、絵葉書が出てきた。

1970年モロッコ。僕より若かった父からの手紙だった。










そんなこと













あるわけねぇだろぉがああああああああああああ!!!!!!!!



どうしてないもんばっかが人を惑わすんだ!!!!!!!

どうしてないもんばっかが人を惑わすんだ!!!!!!!

どうしてないもんばっかが人を惑わすんだ!!!!!!!

どうしてないもんばっかが人を惑わすんだ!!!!!!!










会社やめてぇーなー が染み付いたコピー機

あなたに会いたくて が染み付いた枕カバー

急げ が染み付いたサドル

知りたい が染み付いたマウスパッド

やりたいことがない が染み付いた学食の灰皿

でも、売れたい が染み付いたデモCD

目覚めたくない が染み付いた目覚まし時計

切れたらいい が染み付いたミサンガ

捨てたくない が染み付いたゴミ袋

入れないでくれ が染み付いたポスト

読まなくちゃ が染み付いた小説

手持ち無沙汰 が染み付いたグラス

リスペクト が染み付いたグラス

下心 が染み付いたグラス

やり場のない怒り が染み付いたグラス

なんでもない が染み付いたグラス

開けられない が染み付いたドアノブ

わくわく が染み付いたブーツ

後悔 が染み付いた万札

ずっと一緒にいられますように が染み付いた南京錠

何も聴きたくない が染み付いたヘッドホン

やってらんねー が染み付いたラッピング用紙

繋ぎ止めたい が染み付いたセロテープ

あげたくない が染み付いたヴィトン

ありったけの愛 が染み付いた明治の板チョコ




ピザのくせに ピザ喰いたいとか言いません
買い置きのコンドームは無駄に長持ち
寂しいを照らす液晶
誰にでも優しいティッシュペーパー
に 囲まれて

シャンプー コンディショナー ボディーソープ ハンドソープ
シェービングジェル ワックス コンタクト洗浄保存液 目薬
リップクリーム デンタルリンス……

それら薬液の消費と購入を繰り返し歳を食う
のが 悲しくて仕方ないので物語を創って聴かせましょう

という29歳の血迷った言葉でここをいっぱいにして
なかったことがあったような気分になって
生きているというフィクションを曝して
自らが登場人物になったかのような7分間を搾り出し

そのなかの

僅か1分間だけ何事も忘れて夢をみる!!!!!!!!!















あぁー。

おはようございます。


自由詩 海底杉並区2009 Copyright 猫道 2009-05-14 01:06:05
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