波紋のように広がってゆく
小川 葉

 
 
何を落としてしまったのだろう
波紋が生まれ
どこまでも広がってゆく

はじめに体があったのか
心なのか
見分ける間もなく
時とともに
それは

波紋のように広がってゆく
体に湛えられた
水面は心
その表面を
はじめ強く
広がるにつれて
弱くなっていく
しかしたしかに
それは

その湖畔で
居眠りから目覚めると
また遠い沖で
あたらしい波紋が生まれている
ほんとうに
いったい何を
落としてしまったというのだろう

わたしは夕食の仕度にとりかかる
貸しボートが
次々と帰ってくる
もうじき日も暮れる
真っ赤な太陽が
湖に落ちていく
 
 


自由詩 波紋のように広がってゆく Copyright 小川 葉 2009-05-13 00:55:29
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