五行歌
Leaf

〜第14回花かご文芸賞投稿作品



強い者だけが生き残る
そんなこの世は泡沫
気付けばとうとう
独りになってしまった
ライオンの涙




こちらからあちらへ
あちらからこちらへ
優しさを受け渡す渡し舟
沈まぬよう強固な
いしによって造られた




どうってことない
枝が折れようが
腐ろうが朽ち果てようが
幹さえしっかりと
堅持しておれば




すうぷ 暖かい方がいい
てがみ 届いた方がいい
こころ 穏やかな方がいい
おもい 伝わった方がいい
め 閉じた方がいいかもしれぬ




いつかは還る
あの里道
綿あめのような
タンポポの種達の
旅路が始まる






岩から石へ
石から砂利へ
砂利から砂へ
もうこれ以上
小さくなりようもない




朝露光る水芭蕉の
葉先に映る
あの轍を辿って
貴方が切り開いてくれた道を
私はただ進むだけ




目に映る度に問う
何の為に息を吸い
何の為に息を吐くのかを
造化ほど不毛な美より
限りある儚げな美しさを




想像力は時折残酷だ
名前のせいで
先入観のせいで
みんな私を敬遠してゆく
ヘビとイチゴ 蛇苺



10
ひとりでに揺れるブランコ
学校帰りに
友だちの笑い声が
公園の隅の
ブランコを揺らした





11
海が見える
あの丘へ行こう
他に何も見えなくても
ただあの藍色に
奪われよう



12
宙を舞う糸くず
淹れっ放しのティパック
薄紫色の煙草の煙
必要なのは酸素と水分
ただ息をするだけならね



13
木陰で靄に紛れて
しんしんと止まない
雨の雫を
思い出の欠片を
拾い集める森の精霊たち



14
千分の一の隙間に
浸み渡るエンドルフィン達
僕のシナプスが騒ぎだした
そしてこう言うんだ
「繋がれ・・・宇宙と」



15
紅茶が好きさ
黄色いメルヴェイユに注ぐ
光りに翳し
透けて見える世界は
アカグロイ





16
止む事のないリベットの連鎖
僕を冷ますのは誰?
でもいいんだ、聴こえたんだ
僕の中でまどろむ
オレンジの旋律



17
誰も傷つけたくない
誰にも傷つけられたくもない
苦し紛れに吐いた砂
掻き集める小さな蠍
決して醜い筈はない



18
苦いは辛い?
甘いは楽しい?
酸っぱいは切ない?
朧気な記憶の回路を辿る
ジュース飲み干せ



19
濁った水溜まり
その真ん中を通って行く
きっと
汚れるから
美しさも分かるんだね



20
「バルベリ ブボルベ
バルベリ ブボルベ」
世の中全てに
意味があるとは限らない
無意味さの中に意味がある




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内、4と5が入選でしたが、理由や基準は分からず。
入選と言っても1000/9434の確率でしたので、大したことないです。
勉強になり有意義でしたけど。


自由詩 五行歌 Copyright Leaf 2009-05-08 17:59:28
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