銀羽
木立 悟





窓に映る窓 沈む窓
手首から土
幾度もひらく
白く小さな花火のはじまり


光なく光ある
言葉の淵の舞をすぎ
針を静かにつつむ手のひら


大きな銀の鳥
唱と踊りの輪
大きな大きな
飛べない鳥


さみしさの向こう
流れを見に来て
雪の上の日時計
一枚の旗の空


三十七度の水の稜線
夜の方へ夜の甲へ
影を落として拾わずに


土浴びをする羽が聞こえる
年老いた手がそれを見ている
音だけの赤子 羽の赤子
草の突起に生まれくる


  針は知りません
  ほらここが 釘のあとです
  赤黒いでしょう
  やがて 黒になるでしょう
  やがて 鬼になるでしょう


硝子の昼に落ちる夜
蜘蛛が繰る花
水糸をひき
獲物は茎へ茎へと逃れ


白い花火がつづきつづいて
腰から下は見えなくなり
夜はすっかり夜になり
呼ぶ声の色ににじみしたたる


銀の棘をついばむ鳥
銀の樹を抱き 銀になり
水たまりの景を飲みながら
飢えた蜘蛛のためにうたう



















自由詩 銀羽 Copyright 木立 悟 2009-05-07 13:44:59
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