両手ノ像 
服部 剛

ある日、意表をつくように 
(体の透けた人)は 
微かな足音も立てずに 
この胸の扉の鍵を開けて 
足を踏み入れて来るだろう  

私は三十三年の間 
世に産声を上げた 
あの日から 
今日迄 
目を開いていなかった 

自らの為に何かを欲しがり 
飢えた手をさしのべる時 
(体の透けた人)の姿は 
身を隠したように 
全く見えなかった 

自らの一切を捨てて 
求めるのを止めた時 
私は観た 

私のまことの幸いを願い 
一心に組み合わせ  
光を帯びた、風ノ両手を 








自由詩 両手ノ像  Copyright 服部 剛 2009-05-05 23:17:07
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