『叶わぬ邂逅』
あおい満月

 睫毛にひかる
 指先の鏡
 幾筋もの
 昨日を靡かせて
 球体空間を漂う
 
 漂う影と影とが
 結合すれば
 軈てひび割れ
 風の彼方へ消える
 その現実に微笑むことが
 あなたの夢

 ものはいつか壊れるもの

 夕陽のなかで
 あなたはわたしの手をとり
 微笑んで消えた
 夕暮れの
 交差点の雑踏に
 淡く強い
 蒼い影を纏って

 言葉だけの繋がりを
 断ち切るために
 「消去」したのはわたし
 今更 会う理由などない

 ただ、酔い潰れて
 眠った夜に
 目覚める幻に
 我事のように
 沁みるのは
 あなたの左腕の焼印
 
 膨大なる
 あなたの痛み
 それをあなたは
 今でも抱えて
 いることを思うと
 わたしはたくさんの
 もののまえには
 微笑むことなど
 できない

 わたしはわたしの
 記憶のなかの
 あなたという傷を
 抱えていくしかない

 もしもわたしが
 これから誰かに
 あるいはなにかに
 悪意を持って
 しまいそうになれば 
 あなたのみえない
 涙を思い出し
 諫めていくのだ

 それがわたしの宿命ならば
 わたしはわたしを飛び越えて
 もっと高みへいけるだろう
 
 ありがとう
 あなたに出会えて
 良かったです

 親愛なる
 唯一の友へ



                        2009.5.5(Tue)
 


自由詩 『叶わぬ邂逅』 Copyright あおい満月 2009-05-05 15:31:40
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