黄昏丸航海日誌
非在の虹

海図を広げ ありえぬ海域をめざす
日没には出発せねばなるまい
もはやこの港も甘い乳色の波が立っている

錨を上げ 滑らかな鉄にしがみつく牡蠣をとる
晩餐に間に合うように
夜が帆にも甲板にもにじり寄っている

ありえぬ港を出帆し
ありえぬ海を疾駆し
ありえぬ港をめざした
いつも 来る日も来る日も

日没をひたすら目ざして行く手に波頭をあげ
永遠の黄昏に祝杯を挙げ
船員は皆歌を歌い
牡蠣の味に昏倒したのだ


自由詩 黄昏丸航海日誌 Copyright 非在の虹 2009-05-03 18:17:40
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