浮遊
高橋魚

いつもぽかりと空いている南の空の穴が
今日は埋まっている
穴は穴だと自ら信じなければ
穴でいられないのだと気付き
隠れたのでしょう

あなたは白球
土や草、空気の抵抗がなければ
死ぬまで転がり続ける
ことを知らずに
あなたは草を背もたれとして
くつろいでいる
いつしかあなたは
草になってしまうだろう

あなたは
あの穴のように
転がる運命を受けとめなければならない

満月も、三日月も、
月です
新月だって

満ちても欠けてもいないし
無くなってもいない

名前に食べられる前に
あなたは
宇宙へ帰らなければならないのです


自由詩 浮遊 Copyright 高橋魚 2009-05-01 22:26:57
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