あおば

                    090430


筍は
旬に頂くのが
瑞々しくて
甘くて
テレビの中でも
ほくほくした顔の奥さんが笑う
年がら年中筍が入っているランチを食べている僕は
筍と言われてもかやく御飯の中の具のひとつにすぎなくて
なんでそんなにほくほくするほど騒ぐのか
よく分からない

筍掘りを抱えて
裏の竹藪に
筍を掘りに行く
お祖父さんが手入れをしていた竹の畑は歩きやすく
小さな筍が顔を出そうか迷っているのもすぐに分かり
躓いて転んだり
踏みつぶすこともない
筍掘りをどんと差してから
柄を倒すと
小さな筍が諦めて起きあがる
これ以上は丈を伸ばすことが出来ない運命なのだ
観念して貰いたい
少しだけ悪い気もするが
土を拭って持ち帰る
筍をもっての帰り道は遠く
筍掘りがやけに重くて邪魔になるのは何故だろうとは考えないが
持ち帰らないとお祖父さんに叱られると
長い柄をおもいきり高く持ち上げて
地面に擦らないようにして
歩く

腕が疲れてやりきれない

筍は
皮を剥かれて裸にされて
お鍋の中の湯気の立つ
とぎ汁でアクを抜かれ
小綺麗になってから
じっくりと茹でられて
味を付けられ
色を濃くして
夕食のお膳に並ぶ
少しえごいけれど
自分で掘った筍だから
我慢して食べなくてはならない
筍は好物でもなく
食べることには執着することはなかったが
筍掘りを抱えて
お祖父さんの竹の畑に行くのは年に一度の楽しみのひとつで
何回か訪れたかは忘れたが
多くても3回を超えることはなかったと思う


えごい 方言、堅くて渋い食感の形容、えぐい



自由詩Copyright あおば 2009-04-30 09:59:50
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