落下会
jin

頭蓋骨の中で膨らむ
不穏な気持ちの風船ガム
空はただれたマーブル模様
禍々しい陽光の
毒々しい着色料を浴びながら
落下会が集いはじめる

その集団は千の色彩と
甘い香りに包まれている
彼らは一種の儀式のように
パンの耳を捨てて歩く
バターのたっぷり塗られた
やわらかい部分のみを
食べていきたいから

瞳に貼りついた白い輝点が
クラゲのように泳ぎだす
彼らは導かれるままに
ビルの階段を上っていく
途切れそうにない靴音のソナタ
落下会の長い列は静かに進んでいく

屋上からの風景は
明るさ過剰のディスプレイ
現実はキューブの瓦礫と化している
彼らは増殖する分割画面のように密集し
エレキ的に動く虹色の残像を描いて
パラノイドなダンスを繰り返す
ミラーボールを吐きだす怪獣や
ロボトミーとソフト・マシーンの恋愛悲劇
網膜のスクリーンには
色の洪水があふれ続けている
   眩暈して百花咲きたる目玉裏
   眼動脈に蝶々もつれし…

枝も葉もない花びらだけの森が
鉄柵の向こう側に浮かび上がる
落下会は屋上からこぼれ落ちるように
次々と身を投げていく
鮮血に染まる彼ら自身が花びらとなって
地面に降り積もっているのだ

中には発狂し流言で会員を惑わす女もいた
「美少年には生理があるの…
 満月の夜に丘の上の古城に集い
 涙を浮かべてお尻から血を流すのよ」
彼女は屋上で落下会により処刑された

落下会を乗せた旅客機が
ビルの真上を過ぎていく
窓からは大量のパンの耳が
撒き捨てられている
ギラギラ光る機体はバターまみれ
溶かしバターが垂れ落ちて
そして、人間の雨が降ってくる

マーブル模様の空では
誰もいなくなった旅客機が
いつまでも旋廻し続けている。




自由詩 落下会 Copyright jin 2009-04-21 23:38:04
notebook Home 戻る  過去 未来