誰も知らない夜
あ。

大気は徐々に枝垂れ流れ
紫色に染まってゆく
雑踏は過去のものになり
ほのかな灯りも音を持つ

乱反射していた人工のひかりは
次第に少なくなってくる
大気は更に厚みを増し
地上の全てを影に変える

草も木も花も夢を見ず
神様さえも眠ってしまう頃
よるのしじまに満月ひとつ

どこまでも広がる静寂と濃度
月はゆっくり顔をあげ
大輪の花を咲かせる
隅々まで花弁を広げ
時が来るのを待っていたかのように

誰にも見られず
何も語らず
それでもただ深々と
美しく淡く清らかに

濃厚な夜にぽつりとひとひら
あなたは眩しい花びら落とす



自由詩 誰も知らない夜 Copyright あ。 2009-04-19 00:59:16
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