「 夜にのまれる前に 」
椎名
暗い空に
そびえたつ建物のシルエット
まるで怪物のように
たちはだかっている
立ち止まるな
わたしの足
家はもうすぐそこ
怯えるな
わたしの心
たかが建物の影じゃないか
いつもは
目にやさしい緑の木々も
夜にのまれて
黒いけだもののように吼えている
首筋を撫でていく風が
湿った空気を運び
静けさの中
虫たちだけがざわめいている
勇気を振り絞り
前に進もう
いくさきには
あたたかい灯りが見えるはず
進もう
家はもう
すぐそこ
自由詩
「 夜にのまれる前に 」
Copyright
椎名
2004-08-27 01:18:22