愛のポエム
杉菜 晃



今日(四月十二日)はキリストの復活の日だそうです。
復活の日だから彼女に愛のポエムを書けと
神は言うのです
彼女って あの猫の?
と僕は訊きました
どうもそのようです
なぜ復活の日だから彼女に愛のポエムを書かなければならないのか
理由なんかまったく分かりません
ただ神がそう言うのです
今は分からなくても
いつか分かる日が来るのでしょう
いつかなどと漠然としたものではなく
復活した日から五十日目にそれが分かるのだそうです
五十日目といえば五旬節 ペンテコステです
聖霊が降臨したというので大騒ぎした日です
その日になれば分かるというのですから
そう信じるしかありません
あえて知ろうとすれば
過去の聖霊降臨日にどんなことが起こったかを見る必要があります
聖霊降臨といえば
神が人に下って一緒に住むようになったのですから
軋轢は絶えなかったでしょう
まず一人の人間の中でトラブルが起こったはずです
何といっても 神が住み着くのですからね
それまでの習慣で 誰かに会おうとすると
あいつに会いに行ってはいけないと言うのですよ
内部に住み着いた神の霊が そう釘を刺すのです
僕の知っている牧師なんか いやこちらは前から約束してあったんだからと 
それに逆らってテニスのラケットを抱えてでかけたのはいいのですが
溝に嵌まって肩を脱臼し 入院するは目に遭いました
ほかに逆らったために
玄関に蛇が入り込んだというはなしもあります
これは一人の人間の中で起こる葛藤です
あのパウロでさえ自分の中で起こる対立を
嘆いていますからね
猫の彼女が悩んでいるのも分かるのです
だからこそ彼女に
神は愛のポエムを書いて慰めるように
僕に迫るんですね
そうしないと彼女の中から
神が追い出されてしまいますからね
その結果どういうことになるか
神が死ぬはずはない
死ぬのは人間ですよ
こうなると自分ではよかれと思っても
神の声に耳を傾けてみようとするものです
かくいうこの僕も
神に命令されるままに
こんな深夜にこの愛のポエムをしたためているというわけです





自由詩 愛のポエム Copyright 杉菜 晃 2009-04-13 00:58:08
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