モノクロにモザイク
中原 那由多

高架下の日陰が心地好く感じて
雑草にそびえ立つ鉄塔を虚しく見上げた

蔓の絡まる赤錆びたフェンスの向こう側には
ひび割れたアスファルト上の秩序が腕組みするだけ

車通りが少なかった夕方の国道と
荒れ果てた醜い空き地が並んだら
いつもの当たり前が滑稽に思えてきた

物静かな住宅地に囲まれた小さな公園の
汚れた遊具のそばには誰もいなくて
冷たい空気だけが寂しく戯れていた

蛍光灯が取り替えられていない微弱な街灯は
何を照らして何に感謝されるのだろうか

頑なに通行を拒む看板が哀れに見えて
その先には何にも残ってはいないと知った

誰も住みたいと思わなそうな廃れた売り物件と
1日必ず誰かが押す自販機のボタンが向かい合って
一体何の話をしているんだろうか

もうすぐ咲きそうなキンモクセイの香りが甘くて
自宅さえも非常なものに見せられた

夕陽を反射した飛行機雲が遠く遠くへ伸びていて
細く尖った不気味な顔色をした月が美しかった

今この時は誰にとっての幸せで
誰にとっての悲しみなのだろうか
人の目に映る世界は色鮮やかだったとしても
私には無彩色の舞踏会にしか見えない

世界は、人は気まぐれの塊だから



自由詩 モノクロにモザイク Copyright 中原 那由多 2009-04-10 19:44:31
notebook Home 戻る  過去 未来