生命の息吹
ゆるこ

 
密やかな朝の光の中で
大きな呼吸をするランドセル
不釣り合いな体で芽吹く
今、始まりを知る
 
窓越しの大気が
優しい悲鳴を幾重にも重ねては
黒いスーツの背中を押す
今、歩くことを知る
 
遠くで鳴る警報機の音ですら
とても生き生きと響き渡る
線路沿いに咲く白い花々は
光を凛と跳ね返す
 
私の瞳は段々と
世界から一つの物事に移行する
それが、私の始まり
それが、私の歩くこと
 
 
息吹く春
白いまどろみの中で
手のひらからこぼれ落ちるほどの
かけがえのない胎動を感じる
 
根付く緑
その上を歩く
合成皮の靴の音は
なんと心強いのだろう
 
 
ゆっくりとしなやかに足を動かし
小さな色を秘めた子供たちは
朝日の先に
走って行く
 
私も、一歩
強く踏み締める
汗ばんだ手のひらで
今、春を掴もう



自由詩 生命の息吹 Copyright ゆるこ 2009-04-07 08:11:31
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