100万回のちの桜
さき

同じ朝が来るんだと
指差した標識
その通りに進めない靴を
投げたほうがいいって
4月の風は
あまりにも余所余所しく
忠告していった


何度も曲がったような気がした曲がり道
その先に誰かがいるような気がしていた
全部私の作り上げたものだったって
踏み外した階段
力一杯の反動
そんな夢を夜毎に見ては
夢よりはましな現実にため息をつく
もうすぐ5月病だと
日々のストレスという名を隠れ蓑にして
私は今日もただ一つの欲求不満に
身を焦がす


そう
欲しいものはたったひとつ
綺麗なものや
美しいものは
手に入らないから
その代わりにあなたが欲しいって
何度も言ったのに
聞こえないふりして
また遠ざかって行くんだね


春って

嫌い
桜が咲いても
一緒に綺麗だねっていう
あなたがいないし
それでも一番先に
あなたに桜が咲いたから
一緒に見に行こうって言いたくなるし


ほかに好きな人がいるって
100万回言われたのちの桜でも
私はやっぱりあなたと見たい
でも
その時にはもうしわくちゃになって
抜けた歯の隙間から
今日の風みたいな息を吐いて
泣くんだろうね


よしときゃよかった
でも
駄目だった
桜は綺麗だった
でも
駄目だった









自由詩 100万回のちの桜 Copyright さき 2009-04-05 22:37:17
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