潮騒
壮佑


冷んやりした部屋の
窓際に椅子を置いて座る

裸電球に照らされた
オレンジ色の壁に
魚の形の滲みが付いている

じっと見つめていると
風が梢を揺らす音に混じって
足音が聴こえてきた

だんだん大きく
近くなると
ドアの前で
ぱたっと止まった

(ただいま

誰も言ってくれないから

(おかえり

ひとりで呟いてみる

歩き出した足音は
だんだん小さく
遠くなって
やがて
消えてしまった

誰だったのだろう

魚の形の滲みが
部屋中に広がって
すべてが闇になった

たぶん夜の海だったのだろう





自由詩 潮騒 Copyright 壮佑 2009-04-05 21:08:37
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