四季と旅した少年
こめ

少年は

絶望のなかで

差し込む月の光が

僕をどこかに飛ばす

流れているのは人か風か音か時か

ただ舞い散るのは夕暮れの茜色の風

もうどこにもない世界の忘れ物

キラキラ一面の星空から落ちる星くずは

いつか燃え尽きちりになり

白い雪となって世界を覆う

たどり着いた場所は

永遠と続く草原

そして少年は

ぬくもりというものを求め

あの広い草原を旅した

春は花があふれ夏は緑が輝き

秋は赤くそまり冬は白くふたを閉じる

何度も色をかえる

何度も景色がかわる

何度も心が変わる

しかしいつしか

四季をめぐる草原の旅は

僕を世界が忘れる形となり

終点がないとおもった旅がいつしかなくなる

いったいどれくらいの時が過ぎたのだろうか

もう歩けないようだ

そろそろ僕はお別れを告げないといけないのかな

少年はいつしか髭が生え髪が白くなり

年をとり一人時間を刻んでいき

おじいさんとなっていた

もうだめだと横になり動けなくなり

手足が冷たくなるのがわかった

僕は結局だれのぬくもりも知らず

誰にも知らず死んでいくのかな

僕は忘れ物なのかなと

心の中でつぶやいた

そのとき四季が重なった

ヒラヒラと落ちてくる純白の羽がこの草原を多い

光がさし僕だけをてらしてくれた

そして僕は初めて

ぬくもりを初めて感じることができたのかなと

止まることのない涙を流した

そして気づいた

ただ僕は一人で旅をしていたのではないと

初めて知った

いつでも君たちは僕に違う物を見せてくれた

ここまでこれたのは君達のおかげだよ

そして分かった

僕が終わりだということ

春夏秋冬の4人が初めて合わさり

最初の最後の奇跡を起こし

僕を包み抱きかかえる

光の中僕は君たちと一緒に羽の風にさらわれたいった

そしてそのおじいさんは笑いながら光に包まれた

世界が忘れた忘れ物は

いつしかかけがえのない物を手に入れて

ながい旅路に終わりを告げ

始まりでもあり終わりでもある草原に

死という旗を立てた

そのおじいさんは今もどこかで長く眠っている

もうあの草原はこの世には決して存在しない

だけど・・・・・

世界が忘れたあの少年という忘れ物は

きっと今も風となり

あのぬくもりをくれた四季とともに

僕らに幸せを分けているのだろう





自由詩 四季と旅した少年 Copyright こめ 2009-04-05 11:28:19
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