SRS6  フリーワールド/田柄さん を読んで
露崎

 フリーワールド  田柄さん
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 田柄さんの新作。毎回、こんなことも表現できるのか。と驚嘆するし、意欲的な作品
を続々と生みだしていてすごいなあと感じていたのですが、今回もすごかった。世界の
本質を鋭い筆致でえがきだしているようにおもいます。私は読んで、いろいろなことを
考えてしまって、ちょっと胸がいっぱいになってしまった。長くなるけど、以下にかん
がえたことを書きます。


 この世界は自由で、自由すぎていやになることがときどきある。人間ってほんとうは
自由をおそれているのではないか。おそれているのに、どうしようもなく魅力的でしょ
うがないのが「自由」なのではないか、とおもう。

 この自由という脅威からなんとか逃れるために、人は規範を求めルールをつくった。
人を殺してはダメだし、他人のものを盗ってはだめ。そして、そのルールを守るのも自
由だ。けれど守らなかったら罰するよ、というルールをさらにつくった。規範が規範を
生み自由な状態からわたしたちは遠ざかってゆく。自由はこわい。なにをすべきか、な
にをされるのか、なにがおきるか。なにひとつわからなくなってしまうからだ。

 とはいえ、自由は欲しい。世の中には、不自由であふれていて、こんな常識なくなっ
てしまえばいいのに。とおもうことなんてしょっちゅうある。身分や国籍、さまざまな
しがらみから、たくさんの問題がおこる。そんなニュースがながれるたび、ままならな
い世界だなあと感じる。

 でも、本当はうすうすみんな感づいているのだとおもう。今ある規範が自由の上に成
りたっていることを。ある日、突然、秋葉原で事件はおこるし、ある日、突然、ビルに
航空機は突入する。それは、自由だからだ。規範というものを度外視して、自由にふる
まったからだ。なにかの動機や信念に突き動かされていても、基本的にはそれが自由だ
から起こった。わたしはそんなとき、自由は、カオスはこわいと感じる。

 そして、それでもなお自由を欲する自分を抑えることはできない。だれかが好きかも
しれないあの子と、わたしはなんとかおしゃべりしたりデートをしたいとおもう。そう
いう気持ちは自由だ。けれどもしかしてあの子はべつのやつを好きなのかもしれない。
わたしのことがきらいかもしれない。それも自由だ。
 
 わたしたちは、様々な自由の元に生きる。生きることは祈りに似ている。叶えられる
か、叶えられないかはわからない。あの子がだれを好きになるか、ぼくは何になり、ど
う死んでゆくのか。なにひとつわからない。そのどう転ぶかわからない感じが、祈りに
似ているとおもう。


 ということを、わたしはおもったのだ。すくなくともこのぐらい書いてしまうぐらい
の力がこの作品にあるので、ぜひみなさんも読んでみてほしい。すごい!




散文(批評随筆小説等) SRS6  フリーワールド/田柄さん を読んで Copyright 露崎 2009-04-05 06:07:01
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