さかなびと
山中 烏流




ごらん、
きみのさかなは
もう
あんなにとおくまで
とんでしまえる

あめいろのひれは
けっして、
つばさには
なれないという

そんなでまかせで
まんぞくするのなら
なぜ、きみのさかなは
そらをはみながら
えらを
はためかせているのか
おしえてほしい


  *


ふくらはぎの内側から
小さなわたしとたまごが
これでもかとたくさん
あふれ出る夢を
見てしまったから
わたしには、もう
月経なんて来ない


  *


せかいちずにあこがれるひとは
せかいじたいに
まるできょうみはないの


きみには
先端がないから
器用に
いろいろをこなすことは
とても/何よりも
難しく
それでいて、自然だった


いま、みえて/きこえている
そのはんいいがいのことなんて
いたってどうでもいい
きっと、そんなもの


きみは
ほんとうしか話せない
口先を持たないのだから
当たり前
なのだけれど


わたし、うまれかわるなら
せいしになりたいの


  *


わたしのさかなは
そらをおよいだりしない
ましてや
とびうおでもあるまいし
とんだりはねたりなど
できるはずもない

はんとうめいのひれが
おなさけていどに
くっついていて
あとは
ちいさなえらがあるだけの


しかしきみはそれを
うつくしい、

という


  *


あれはさかなですか

いいえ、
しかし鳥ではありません










自由詩 さかなびと Copyright 山中 烏流 2009-04-05 01:53:41
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