春夜風味
サバオ*



桃色の甘い海に溺れながら
貴方だけを見ていた



あたしの愛しい人には
守るべきもの というものがあって
運命という 絆が強すぎるみたいで
あたしは遠巻きに
とぼとぼと 途方に暮れて

愛しい人の指先は どんな味がするのだろうと
痴女のように 俯くことしかできないんだって



見つめる瞳の色を 知られたら
聡い貴方に すべて見透かされそうで
距離を置いて そっと伺うしか術がなく

だから
貴方があたしを見る時の 瞳の色を知らない
それは幸せなことかも 知れない



想いが
匂うんじゃないかというくらい 駄々漏れて
足元に滴って 水溜りを作ったのは 昨日

見つからないように 
台布巾で必死になって拭いてたら
涙が ぽたりぽたりと 落っこちて
想いと涙が マーブル模様を描いてた

綺麗だった? 醜悪だった?



「愛しい」と 告げることができないから
聴かせるための溜息を吐いた



甘く甘い
春めいた 夜

誰のせいかは 闇の中



嗤ったのは誰?





自由詩 春夜風味 Copyright サバオ* 2009-04-03 20:03:19
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