星から釣り糸を垂れる少女
ヨルノテガム







 三日月型の星に腰掛け
 釣り糸を垂らす少女の
 シルエットは明るい

 リールもないのに糸は地球の深海まで届き
 砂にまぎれた平目の目の前で針を泳がす

 夜は多くのものを運び 
 そしてまた
 多くのものを消し去る

 残り僅かな暗闇の中で取り残されているのは
 竿から糸を垂らす少女の物思いと
 深海に眠ったフリする半開きの目をした平目の
 好奇心の揺れ動きだけであった

 水面は耳を澄ます

 もちろん 平目は針を飲み込む
 星は少し傾く
 少女はひかれて地球へ落ち込む
 宇宙はこういうときいつまでもロマンチックに出来ている
 平目は巻き上げられ
 少女は勢いよくスカイダイビングに興じる

 平目は膨張してホ乳類へ変化して ついでに
 人間の少年として立ちすくむ

 少女は収縮し墜落防止のために 猫へ早変わる、
 上手に着地できるね。


 朝、
 こんなに早起きしたことない少年は子猫を拾う
 ミャーミャーと人懐っこくついてくる不思議な生き物との
 出会いに時間は何処にも存在していなかった
 胸に抱き上げると温かくて それは幼い歯で少年の指を噛んだ

 少年はネコを 空に向けて持ち上げ
「ネコ!」と言って高い高いところから自分の頬へすり寄せた


 挨拶しようね。
 ずっと挨拶しよう












自由詩 星から釣り糸を垂れる少女 Copyright ヨルノテガム 2009-03-31 03:36:49
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