円玉
aidanico

 きみのなまえをしらない
 しかし柱を折る方法を知っている
 きみのなまえをしらない
 しかし一杯分の奢りかたはしっている
 きみのなまえをしらない
 いたちごっこの後を片付ける
 きみのなまえをしらない
 だって(ほんとうは)、いらない

 多摩川を越えればもう冬
 凍った泥水はつめたくて
 市ヶ谷に赴けばもう春
 雪解けのつちは泥濘で

 平和とか希望とかいつだって世界の好みはきまってる

 きみのなまえをしらない
 買えば良い煙草の種類はしっている
 きみのなまえをしらない
 小銭を募金箱にいれる
 きみのなまえをしらない
 ひみつの日記を開けている
 きみのなまえをしらない
 名のりかたさえしらない

 新宿で出会えばまた朝
 気付けば路傍にひとりでたっていて
 池袋のテアトルでレイトショー
 仄暗い真昼の図書館

 狭間をうまいこと渡りに船を出せにげきるなんてわけないさ

 躊 躇わずにわたせよ
 あ あ、いまかぜがきれるよ
 (深 さを測るのだ
 (硬 貨がしずむおとをききながら、
 
 ま あるい/の は あ なが あ るから さ、!
 あ るい/ は あな た が わるい の さ、!
 あ たま は/ も と も と かたい のさ、!



自由詩 円玉 Copyright aidanico 2009-03-30 23:02:49
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