怪獣の人
麻生ゆり

久しぶりに君を見た
あのときより未来人になっていた君は
なんだかギンギラギン
どこかの怪獣のようだ
人の心は変わるものだから
と言って別れたけれど
いくらなんでも変わり過ぎだろ
思わず苦笑してしまうよ
だけど君と一緒にいた時間
それだけは確かだった
温かで安らぎを与えてくれたね
どんなにか救われただろう
怪獣になっても幸せにね!

それから3ヶ月
また君を見つけた
頭から先のとがった角が2本はえていた
隣にいるのはタコ足はやした火星人
恋人ができたようでよかったね
そんな君がふと僕を見つけた
微笑みながら近寄ってくる
笑顔は…
僕の好きな笑顔だけは変わってはいなかった
もう怪獣だけど
「久しぶりね」
と君は言う
はいはいそうですねそのとおりです
月日はこんなにも残酷になれるんですね
「今ね、こちらの方とおつきあいしてるの」
言いながらタコ星人を紹介する
「いやぁ、どうも…」
怪獣の彼氏は照れくさそうに
腕の1本で頭だか顔だかの汗をぬぐう
「や、これはどうも」
僕も一応大人の待遇をする
そしてしばし沈黙
それに耐えかねた元カノが口を開いた
「それじゃ私たちこれからご飯食べにいくから…」
彼女らはそそくさと街の人込みに消えた
後には
穴の空いたジーンズに
着ふるしてしわしわのティーシャツ
汚れたスニーカー
色落ちした野球帽を身につけた僕が
ぽつんと残された
大通りで周りに人々はたくさんいる
だけど僕はさびしかった
世界とは
僕と他者でできている
そんなことを
この雑踏の中で感じた


自由詩 怪獣の人 Copyright 麻生ゆり 2009-03-28 21:56:09
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