バスの墓場
コーリャ


 この星系のどこか
 色でけずったメタンガスにちかいどこか
 バスの墓場がある
 何億台もかさなりあって絶命している
 すすけた錫がキーンと光っている
 純粋だと主張する天頂方向に

 銀河中をdetourしてきた
 鳥類たちはその存在のことをしっていて
 住むこともあるが
 たいていは一夜の宿をもとめて
 酸化した天井に列なっている

 いまでも座り心地のよいソファには
 思い出とよばれる人々がすわっているが
 次の停車駅でボタンをおして
 おりていってしまう

 古参のバスは植物園になっている
 ドレミでしか発音できないなまえの
 植物が蔦を伸ばして
 おおきなハンドルに手をかけている
 隕石になってしまえば酸素がにおうきがした

 協調性のかけた四輪は
 ひとつのことでコンセンサスを築いた
 バスに終着点があるというのは天動説論者のいいぐさで
 便宜的に関内だとかポカラだとか
 ヘルシンキだとか
 ブエノスアイレスだとか
 よばれる地名くらい非宇宙的なものはない
 ガニメデだってそうだが
 トラルファマドール星はちょっといい
 半音あげればもっといい

 バスストップ3光秒で
 おもむろにヘッドライトは目をあけて
 交線的にクラックションホーンが鳴りはじめる
 みんなおなじところにむかっているんだ
 ちょっと発音できない場所に
 むかっているんだ


自由詩 バスの墓場 Copyright コーリャ 2009-03-28 14:58:07
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