夜歩く死体と色眼鏡(そしてやがて来るクライマックス)
ホロウ・シカエルボク




甘ったるい香りが行き惑う
薄暗い通りで路上にしがみついて
行き合わせた奴らに悪態を吐いていたんだろう
すれ違うだけの相手なら溜め込むようなことはないから
少なくとも、仕掛けた方の胸の内には
後ろ足で逃げながら神にも負けない口調の数々さ
誰にも勝てないくせに負けることがない
毒団子で死んだ鼠の死体を腸が出るまで踏みつけること
お前の狂気や勇気なんて所詮その程度のものさ、お前の中じゃきっと極上なんだろう
まるでコンピューター・ゲームの
ゾンビみたいな無難で陳腐な逸脱さ、臭い息を吐いてみろ
絵空事じゃそいつは不可能に近いだろう
百ワットの光だけしか明るく感じられないような
そんなこだわりでなにを手にしてきたんだい、完全な勝利以外は
裏庭に掘った穴の中に隠してきたんだろ、お前は素敵だ、お前の美学とやらは
流行りの話に涙する女子高生とそんなに違いはないのさ
甘ったるい香りにしがみついて
受け入れてくれる女にだけ強がってきたんだろう、路上に撒き散らしたコニーアイランドジェリーフィッシュの
総数をプラカードにして頭上に掲げてきたんだろう?
プライドってだいたいは滑稽な代物さ
胸を張ってるのはそれに気付けない連中だけさ
自分を馬鹿にすることから始めなくちゃ
徹底的に馬鹿にすることからじゃないと
その先に見えるものがみんな間違いになっちまうよ
自分に王冠なんかかぶせない
王国の概念はすべてを壊死させてしまうものだ、紫色の肉体じゃ
歩くたびに組織をどっかに無くしてしまう
いつでも入れ替え出来るイズムを所持しなよ
遠近両用眼鏡と同じ位、真理はこの世に溢れているぜ
お前の視力がどんぐらいかで
もう数えられないくらいに
どんなフレームを選ぶかってとこでも
それはもう数えきれないぐらいに
闇雲に追っかけたって手に入るもんじゃない、自由なプロセスを構築することが一番大事なんだ
自分に痛快な色眼鏡かけて、うんざりするような台詞を吐いたりしちゃいないかい
誤解すんなよ、心配してるんだぜ
誤解すんなよ、なんとかしてやりたいと思っているんだ、安っぽい台本に乗って浮かれている大根に
ほんとのドラマは静かに
クライマックスを迎えたがるものなんだってことを
夜明けのように静かに
鍾乳洞の様に複雑に
判るかい
判りあえない隙間に舌を這わすのはもう止めて
これからは、ひとつずつなにかを選んでみようぜ
ひとつずつ、手のひらにとって…形状は言葉だ




それだけで
真理の数は増える




自由詩 夜歩く死体と色眼鏡(そしてやがて来るクライマックス) Copyright ホロウ・シカエルボク 2009-03-28 00:29:16
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