夭折の歌人に捧ぐ。
あ。

10年ほど前から、わたしはネットで詩を書くようになった。単純に、保管できる場所が欲しかったからだ。
それから今まで、たくさんの人に出会った。詩を書く人、詩を読む人、両方の人。
彼は、その中の一人だった。

私よりも3つほど年下である彼は、かなり初期の頃からの知り合いだ。
とても繊細な言葉を綴る人で、私は彼の詩が好きだった。また、彼も私の詩を気に入ってくれており、長きに渡って交流を続けていた。

ある時期から彼は、短歌を始める。その才能は素晴らしく、何度も賞を取り徐々に名を知られるようになっていった。
私と彼は住んでいるところが遠かったため、実際に会うことはなかった。それでも時々連絡を取り合っては、短歌の話や詩の話、その他彼が飼っている猫の話や私が飼っていた犬の話、お互いの恋人の話や友だちの話など、本当に様々なことを話していた。
その時は、彼が素晴らしい歌人であるということを申し訳ないが忘れており、たわいもない馬鹿な話もたくさんした。
私が詩集を出したとき、彼はすぐに購入してくれた。そして時を前後して彼も歌集を出版する。私も勿論すぐに購入した。しばらく後に本当に素晴らしい歌集であったと伝えるととても喜んでくれ、歌集の批評会に穂村弘氏が参加してくれてサインを求められたと、自分もサインをもらったと嬉しそうに語っていた。

彼の訃報を知ったのはつい昨日の話だ。ある経由で偶然知り、驚いてネットで検索した。
1月24日のことだったという。死因は心臓麻痺。26歳の若さだった。
恥ずかしながら2ヶ月も知らなかったのだ。新聞に載っていたらしいが、私は新聞をとっていない。そういえば最近連絡がないなと思ってはいたのだが。

一言くらい何か言って欲しかった。急逝なんて、そんなすぐに受け入れられない。未来のある人だった。歌壇でも期待されていた人だったと聞く。
ほんの少しの間だったが、3年ほど前にブログのような掲示板を使って、彼と短歌交換日記というのをしていた時期がある。色々な事情ですぐに終わってしまったのだが、URLは残していた。数年ぶりに開いてみた。
胸が苦しくなった。やはり、彼の短歌は美しかった。私のはひどいものだ。だからこそ余計に彼の歌が美しく響く。

2ヶ月も知らなくて、ごめんね。携帯のメモリがいまだ消せない。かけてみたけど繋がらなかった。当たり前ね。
ありがとう。あなたは素晴らしい人でした。



散文(批評随筆小説等) 夭折の歌人に捧ぐ。 Copyright あ。 2009-03-27 19:51:16
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