生贄タンバリン
カンチェルスキス



 




 あいつは俺の噂話をして
 俺から片腕を切り落とされた
 交差点の銀行は
 何度も合併して名前を変えた

 黒塗りのタクシーが客待ちして
 運転手が鼻毛をむしってた
 丁寧にも手袋をはずして

 そこが赤信号だと
 どっかが青信号だ

 屋上のビアガーデンじゃ
 ミニスカートの気取った女が
 歩き回って
 男たちの汚れをふき取ってる

 いつものように
 ドブ川には決して浮かんでこない
 死体が何体も
 原因は金か女か少女趣味か
 淋病のロバの死体も沈んでる
 誰も気にとめやしない


 温度計の水銀を飲み込んで
 少量なのに
 みんな即死
  違法駐輪の下を横切る
  鼠

 ブティックの女と歯科助手の女と
 キャバクラの女
 
 今 俺の乳首を舐めたら
 地球がひっくり返る素敵な声を出してやる

 水溜りの鳩の死体を
 踏んずける感触



 券売機の前で
 酔っ払った男が
 女を帰さない
 女はママがって言う
 女がほしがってんのは
 ママなんかじゃなく
 男だ
 気軽にやられたって
 いいわけをほしがってんだ
 過剰なアルコールに
 しけこんだホテルで
 ペプシの泡のような3P
 


 ところで
 俺の噂話がどんなものだったか
 俺は知らない
 俺の手にはあいつの右腕
 俺は頭のイカれた浮浪者に
 それを
 フランスパンだと言って
 くれてやった


 誰だっていいんだ
 誰が誰だっていいんだ


 ありふれたノートの罫線か
 桝目


 誰だっていいんだ
 誰が誰だっていいんだ






自由詩 生贄タンバリン Copyright カンチェルスキス 2004-08-23 15:56:44
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