思い出
noman

指先に載るほどの大きさの過去を
テーブルの上に置いて目を
閉じたら 重い
液体の粒が眼窩と眼球の隙間に
散乱した
そのとき夢で見た雪深い森の中を
毛の長い野良犬が歩いているのではないかと
思った
何が足りないのかは思い出せない
頬杖をついて夜を待ったが夜は
思いの 外
遠く
気がついたら 私の
角の無い体は滑る
ように移動していた

はっきりとした
記憶は無いが
たぶん身体が角を失うのは
これが初めてではない



自由詩 思い出 Copyright noman 2009-03-18 02:01:33
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