風はうたう 僕はここに居る
プル式

ペットボトルの風車がきゅうきゅうと鳴った
日だまりの静寂
文化住宅の隅にさっと過ぎる影
いつまでも続きそうな
退屈で穏やかな時間
揺らぐ平行感覚
ここが向こう
ここが空
地面から放たれ
どこかに居る僕
ここに居る僕

僕は何
ここは何処
思考に出口は無い
出口の無い思考は緩やかなカーブを描き
x軸とy軸とz軸で囲まれた現実の上で
突き当たりを探している
そこにはただ僕という殻があり
突き当たりなど無いと言うのに
いや待ってくれ
本当に突き当たりは無いのだろうか
それこそ僕の思い込みでしかなく
本当は四方が壁では無いだろうか
気が付かない僕は滑稽なのでは無いだろうか
そう思うと足がすくみ
何処へも足を向ける事が出来ない気がする
足下を見つめながら
思考を準える
もう一度
ゆっくりと
取りこぼしの無いように

柔らかに陽の光をはね返す地面に
小さな影が停まった
ぼんやりと僕は僕に帰る
そうして帰結する

日だまりにきゅうきゅうと音がする
ペットボトルの風車は何かを巻き取る様に
風に向かいながら回り続けている
小さな影はさっと飛び去り
僕を置き去りのまま見えなくなった。


自由詩 風はうたう 僕はここに居る Copyright プル式 2009-03-17 13:50:43
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