連続電子情報網依存症患者自然発火炸裂事件
北街かな

発火したディスプレイに吸い込まれて
ネットワークの窓にべっとり顔を貼り付けたまま
君は死んでしまったよ

指先に桃色の肉が覗け骨の音がカチカチ鳴るまで
キーボードを叩き続けて
疲れた目玉を膝に落としながら、まるで泣いていたように
君は機能を停止したんだよ

君のアクセスしていた銀色金属たちの打算的未来は
てらてらと来世紀を照り返して高く、高くあった
そこでは皆、うすら笑いに目配せをしながら
情報をはやくよりはやく流して手早く混ぜていた
繋がっているような、断絶しているような
始まり間も無いような、とっくに終わっているような
夢想と理想と闘争と達観とがどんどん、
びゅんびゅん流れていた
それらがネットワーク・コミュニティの底面から側面に至るまでを無機質にぎらぎら艶めかせていたので
君は何度も目をこすっていたよ

君だけの暗室は煤だらけになり
テクノロジーも有機生命も、もはや区別がつかない
誰が君の死体に気付いてくれるだろう?
誰が君を生者どもの日常から匿ってくれるのか
君の力なき魂を、跋扈する邪教の悪から庇ってくれるのは誰?
そのまま止まっている場合じゃない
急いで腐乱し異臭を放たなくては
いびつな君を証明しなきゃ

焼け落ちた君の右手は
燦燦とした未来を差して希望の指標とせんとしていた
ああ、僕らの向かう先はなんとまばゆく鋭利にして寛大、灼熱の夢たる無二の光であることだろう
君の孤独は崇高偉大なる文明利器の匙に救いあげられて
なんと安らかに焼け焦げてしまっている
死してなお向こう側を熱望していることだろう

汎用電子機器電源に起床睡眠と生死を翻弄されながら
君は頭からディスプレイに突っ込んで、
向こう側に行ってしまった
炸裂した脳の隅にて得意満面の笑みであることだろう
溶け出した血肉の汁がマウスパッドに染みこんでゆく
もはや寂寥に惨めなるを告白すべくもない
君は完全に止まってしまったよ


自由詩 連続電子情報網依存症患者自然発火炸裂事件 Copyright 北街かな 2009-03-01 19:21:34
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