絶望についての対話(3)
Giton
(承前)
P:いや、たいへん気持ちよく聞かせてもらった。君の話は、オリュンポスの丘を渡る風のように、右の耳から左の耳へと心地好く通り抜けたが、ぼくの頭にはただ一つの印象だけが残っている。それは、君もまた、ただ一つの実在を求めて足掻いているということだ。
A:ペテルスのヤハヴェ教への勧誘なら、御免蒙りますよ。
P:君とは、もっと話をしたくなってきた。
ひとつ、問題を出しておこう。さきほど君は、人を愛することはできても信じることができないと言った。
ところで、「愛する」の対象は、特定するのか、しないのか?「信じる」の対象は、特定するのか、しないのか?
答えを考えついたら、また訪ねて来たまえ。
もう外が白んできたようだ。君は体操場へ行くのだろう。ぼくも、馬小屋へ、飼い葉を遣りに行くとしよう。