リ/バース
望月 ゆき
昨日が、夜の中で解体されていく
肉体だけを、濡れた風がばらばらにして
過ぎ去り、それでもまだ鼓動は 宿る
わたしが必要としているものは
わたしの内部の、底辺にあって
誰かの、決して届かない舌を いつまでも
待っている
たどりつけるまで、幾度も
動脈であみだを繰りかえしながら
誰も見たことのない永遠とか無限について、
考える あるいは、
眼を閉じて、眼を開く その反復
次の季節が廻ってくる、違和感
そうしてなにもかもは 真似事だと
たましい、だったかもしれない
たましい、と口にすることの曖昧さの明証
夜が 眠りからいちばん遠い場所で
しゃがみこんでいる
すこしのびた爪の先を、噛みちぎる
小刻みに、咀嚼されながら 不安定な
わたしの中心へと向かう
太陽に沿って、朝がくると
解体されたきのうと、よく似た背格好の今日が
組み立てられていく
規則正しい脈のふるえが伝わり、わたしの
皮膚が閉じられると
昨日よりすこしだけ、低体温の今日がはじまる
初出 『詩誌 詩悠』創刊号