ひき肉
かんな

ひき肉を買った
何だか退屈な日常を少し変えたくて
冬のわりには暖かく
スーパーは少し込んでいる時間帯で
特売ってわけでもなかったけれど

料理レシピのサイトでふいに思い立ち
ひき肉 
と検索してみたら
ふっくら煮込みハンバーグ
というのが出てきて目にとまった

牛乳はあった、玉ねぎも、卵もあった
手元になかったのはソースを作るデミグラ粉と
パン粉と、そしてひき肉だった
財布を手にとってスーパーへ走る
なんだか風が気持ちいい

ひき肉をこねた
パン粉に牛乳、炒めた玉ねぎ、卵を入れて
後ろ向きな気持ちまでこねたなら
かたち作られたのは
小さなしあわせのタネだった

フライパンに油を引いて焼く
ジューッときれいなメロディ
そのかたわらの鍋では
お湯にデミグラ粉を溶かしてソースを作る
焼きあがったハンバーグをからめた

ふっくら煮込んだハンバーグは
小さなしあわせの汁を閉じこめて
食べられるのを待っている
だから今度はあなたにも作ってあげたい
分け合えたらうれしいから

残ったタネを使って
また煮込みハンバーグを作って
ほうれん草のソテーも添えて
あなたの好きなとろけるチーズものせた
しあわせがふたつに増える

まだ残ったタネを使って
今度は肉団子の甘酢あんかけをつくる
あなたの提案で
ピーマンの肉詰めもつくる
この次は餃子とか食べたいねって話すから

ひき肉はどこまでも
小さなしあわせを広げる



自由詩 ひき肉 Copyright かんな 2009-02-18 20:39:17
notebook Home 戻る