忍冬の紅い花(臥薪嘗胆!Mr.チャボ)
角田寿星

「冬だからね」

ああ 冬だからね
花が咲くには寒すぎるから
フラワー団の悪事もめっきり少なくなった

怪人水仙男との対決はすませたばかりだし
先日は駅前で一般人に果実を根こそぎもがれて泣いてた
怪人イチゴ娘を保護してきた
ぼくだって
寒いのは苦手だよ
コタツのテーブルに頬をぺたっとくっつけて
すきま風とすきっ腹をどうやってやり過ごそうか
考えている

私鉄電車が窓の外を通りすぎて
かたかたと風がすこし強くなり
思わず身を縮めた

公民館の丸屋根の上から
一望した街の景色をふと思い出した
春には家々の屋根があって
電柱がいくつも立ってて
踏切の前はいつも車の渋滞で
夏には家々の屋根があって
電柱がいくつも踏切は
秋には家々の電柱 冬には
季節まったく関係ないじゃん
変わらない街の景色

「もし 俺がヒーローだったら
かなしみを近づけやしないのに」って
誰かがうたってたけど
ヒーローになったからって
すごく強くなるわけじゃないよ
ほんとにつらいのは寒さじゃなくて
閉まったままの町工場を見るのがつらい
いいことがあまりないねえ と
みんなと顔をつきあわせるのがつらい
そんな人たちから
残りものやパンの耳をもらったりするのが
申しわけなくて
つらい

「冬だね」
ああ冬だね
としかいいようがない

パトロールに
出かけようかな
たぶん電気屋さんとこのテレビで
サッカーの中継とか
やってるかもしれないし と
おもたい腰を上げる



自由詩 忍冬の紅い花(臥薪嘗胆!Mr.チャボ) Copyright 角田寿星 2009-02-15 10:31:44
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