発掘作業員
Giton

泥炭の下に閉じ込められた沼沢地、
蛙にならないおたまじゃくし、
時間をなくした植物たちの白い夢、
動かないげんごろうの開(あ)いた口、

生きたまま化石になろうとしている沼は、
寒天のように先史人の遺物を含んでいた:
素焼きのかけら、子安貝の耳飾りが、朽ちぬまま、
ぼくらの日焼けした胸のようにくすんでいた;

ぼくらは、それらの、
ぼくらのために埋もれていたようなかけらを、
柔らかな草に、ひとつひとつ包んでいた、
婚約指輪を交わすように、紐で結んでいた。

ボクガ土二刺スすこっぷノサキガ、
ダンダント、浅クナッテイルコトニ、
キミハ気ヅイテイタロウカ?
れりーふノヨウニ化石シタボクラガ
掘リ出サレ、人目二曝サレルコトヲ、
ボクハ何ヨリモ恐レテイタノダ――

このぶんでは、沼の基層に何が埋まっているか、わからないな……
古生物学者の目が輝いた。
いちど壊してしまった遺構は、もとには戻らない……
考古学者が主張した。

埋め戻しが始まったので、
ぼくは、漸くほっとした:
先史人より古くからいる
ぼくらの地層は、もっと下。

スコップで土を返しながら、こそこそと、
ぼくらは、人に聞こえない声で誓った。
ぼくらの化石が結晶している沼の底!
きみの目が、いたずらっぽく光った。


自由詩 発掘作業員 Copyright Giton 2009-02-12 07:53:22
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