時間の誕生
たりぽん(大理 奔)

蛍石フローライトの屈折系でねじ曲げる
透明ゆえの分光
赤道儀のその先で
一つとしてそろわない秒針を
幻想のように共有して
誰かの未来で僕たちはまばたきをします

季節から時計がはぐれてしまったのは
いつからだったのでしょう
わたしとあなたの時間が
ひとつにならなかったあの夏からでしょうか

  経験値を積み重ねるゲームに
  調教されていく秒針
  ずれていく振り子に気付いてしまう
  昼下がりの空腹

さやさやと笹をゆする風に
秒針を取り戻そうと
両手を星空にゆだねてみます
おおきな文字盤には
あいまいにまたたく星だけが
オルゴールのピンのように
水面を弾きます

音楽が聞こえるでしょうか?
調子っぱずれの鼻歌に
へたくそな口笛の伴奏が
そっと寄り添う肩先で
生まれるものが
あるのです


自由詩 時間の誕生 Copyright たりぽん(大理 奔) 2009-02-12 00:17:35
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