深呼吸。
狠志

からっぽの心は、空の果てに消えてしまったのでしょうか。

校舎の屋上、空と此処の端っこで、風に揺られて。一歩踏み出せば、重力に逆らえずに堕ちて行くだろう。冷静に今までを走馬灯のように思い返すこともなく。
堕ちた後の処理は、僕には出来ないから。汚い思いはしなくて済むであろう。

深呼吸。

一歩踏み出すと、僕は空と一緒になれるのだろうか。堕ちて中々拭えない記憶と血痕と一緒に其処と一緒になるんだろうか。それとも、何もなく、何とも一緒にはなれずに、消えてしまうんだろうか。なって見ないと、解らないけれど。

深呼吸。

どんな些細なことがあったのだろうか。そんなことも解らないくらいに、心とやらはからっぽになってしまった。カッターナイフでちょこっと切ってしまったくらいの傷を負ってしまったからだろうか。最初から何にも無かったかも知れないけれど。

深呼吸。

空を見上げてみた。それは、とてもキレイで。けれど、そこには恐らく何もなくて。飛行機雲が傷付けたくらいの小さな傷があったくらいで。けれど、やっぱりとてもキレイで。すーっと空を吸い込んでみて、少し心に何かが触れたくらいで。涙がこぼれた。

深呼吸。そして、目を瞑る。

からっぽの心は、空を吸い込んで、空っぽになったのでしょうか。後ろ向きに一歩進んでみました。あぁ、此処はやっぱり落ち着くんだなぁと思いました。空と一緒になるにはまだまだのようです。だから、空を吸い込んで。

深呼吸。


自由詩 深呼吸。 Copyright 狠志 2009-02-10 00:48:36
notebook Home 戻る