なつこの代休
小川 葉

 
なつこさんが代休をとった

気配だけ
そこに残して
どこにいってしまったのだろう

お昼ごろ
今日なつこさんは
お休みだったんだね
という人が
かならずひとりやふたりいる

そういうものだ
なつこさんは
気配だけ残して

ぼくは深夜
だれもいない部屋で
なつこさんの席の前に立って
話しかけるでもなく
その気配を感じていた

いつしか
なつこさんは
何事もなかったように
出社してきて

ある日
そこに立っていた
ぼくの気配に気づいたのか

あなた
ボールペンさがしていたわよね
あたしの机の引き出しに
あったわ
と言って
ふゆこさんがぼくに
渡してくれる

そのボールペンはたしか
なつこさんに
プレゼントしたものだった

ながい
空白があった
ボールペンのインクが切れていた

ためしにぼくは
なつこ
と書いてみたけれど
あの夏は
もうどこにもなかった
 


自由詩 なつこの代休 Copyright 小川 葉 2009-02-10 00:15:22
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