葉女
小川 葉

 
存在しない
姉について思う

父が父であるとき
母が母であるとき
姉はどこにも存在しない

ある日子供が生まれた
ある家で
そこはわたしたちの家
わたしはそこに
存在しない

ここではない
別な世界で
父が父であるとき
母が母であるとき
姉は生まれていたのだ
わたしが存在しない
その世界に

桜の木が花を咲かせ
散るとしても
生き生きと
新緑を
風にまかせてるのは

その一枚一枚が
わたしたちなのだから
誰でもない
一枚一枚の葉であるのだから

とても遠いところへ
お嫁にいった
存在することのなかった
一枚の葉は女として

父が父であるとき
母が母であるとき
姉が存在しない
この世界には

わたしと言う
一枚の葉が男として
存在してしまっている
 



自由詩 葉女 Copyright 小川 葉 2009-02-06 05:05:13
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