鑑別〜till the winter me do part〜
伊月りさ

裏返しのミラーボールが
わたしを残して膨張し続け
鋭利はない、
鈍器もない、
じゃうじゃうの手足しかない、
わたしはわたしを壊そうとする
怖そうなわたしを壊そうと
するのにわたしを壊せない

  だあれも殴ったことがない
  わたしはわたしを壊せません
  だあれも殴ったことがない
  わたしは知っているからです、
  わたしをつくったひとたちの
  超効率的暴力 すなわち
  排‐傷口/血液的暴力が
  high効率だということを

察知、
さっきの憂鬱が
殺気だけの幽霊になって
わたしはわたしの破砕を見た
反射で一帯雪原になり
「きれい」と泣いても
しぶとい破片を踏みつけていた

  わたしばかみたい だけどばか
  みたいなんじゃなくて わたしばか
  なの だって舌噛み切ったほうがはやい

細胞分裂したわたしの増殖した視床下部によると
有意義を探す脳みそに有意義な細胞などないので
加害も被害も、ここで終結させるのが最良なのだ

蛍光灯の紐をひく
それは消灯のような首吊りで
映す科学のすべてが冬で
大量発生の蓑虫が
刮目して眠っているが
刮目して眠っているので
今なら悲鳴を聞かずに済む、と
ずるい
わたしに火を放つ
熱膨張ではりつめて
胸腔みたいに世界が熱くて
正しくあえいでもがいている
自意識の呼応でもがいている
たくさんの
じゃうじゃうの手足しかない


自由詩 鑑別〜till the winter me do part〜 Copyright 伊月りさ 2009-02-05 02:02:23
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