小さな命
柚葵




【ほら、見てごらん】



そういわれ


僕はそっと小さな箱の中を覗いてみた。



箱の中には螢が数匹…



螢の光はとても


綺麗で優しくて、

だけど小さくて儚くて…

悲しい光に見えた




【螢はね、ちょっとの間しか生きられないんだよ】


僕は、どうして??と
何故か聞き返せなかった。


【それに比べると、人間は幸せだね】



僕は首を傾げて
螢をじっと見た




螢の光は次第に
弱く小さくなっていった





【もうすぐ、終わるんだね…】

━━━なにがおわるの??
僕は聞いた。



返事はなかった




また僕は螢をみる



一匹の螢は
箱の底に
仰向けになったまま
動かなかった


他の螢も
同じように
動かなくなった


━━━ねぇ、螢さん動かないよ、どうして??




【螢さんはね……】



その続きは
ずっと待っても言ってくれなかった


【螢さんのお墓つくろっか…】

━━━……螢さんしんぢゃったの??



返事はない

ただ、凄く悲しい顔をしてた。





僕は螢のお墓を作った
小さな小さなお墓を…



【螢さんはまた、この季節になったら逢えるよ】


そう言って
僕の頭を撫でてくれた





綺麗だけど
弱くて小さくて
とても儚い


小さな短い命



僕は命の儚さを
すこしだけ学んだ気がする





自由詩 小さな命 Copyright 柚葵 2009-01-30 22:47:02
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