ひとのきかん
小川 葉

 
ものごころついたときから
あるもよおしものが
そこでおこなわれていて

開催期間:ひとのきかん

とかかれてあるので
ふしぎにおもい
うけつけのおねえさんに
ひとのきかんとは
なんぞやとたずねると

ひとのきかんとは
あなたのきかんでもあるし
わたしのきかんでもありまた
現在過去未来
あらゆるひとのきかんでもあるの

それはえいえんのようだけれど
わたしはきみよりもはやくうまれたから
きみがうまれていなかった
わたしのいきていたきかんには
きみのきかんはないわけ

そしてわたしはねんれいてきに
あなたよりもはやくしぬから
わたしがなくなってしまった
あなたのいきているきかんには
わたしのきかんはないわけ

それが

開催期間:ひとのきかん

なのよ

せつめいをきいて
すぐにはいみがわからなかったけど
うけつけのおねえさんに
ありがとうとおれいをして
もよおしものをみてるうちに
そんなことはどうでもよくなって
ゆうがたちかくまで
もよおしものをみていて

本日のもよおしは
これまでです
あすのおこしをお待ち・・・

ということになって
ぼくはひとりとぼとぼと
いえじについた
きっとあすも
もよおしものはやっていて
あのおねえさんにまたおなじことを
きくのかもしれない

いえにつくと
いつもおしっこがしたくなるので
あるひぼくは
だいはっけんをしたかのように
はっときづいた

これも
もよおしものだし
ここもたしかに
ひとのきかんだ・・・と

つぶやきながら
ひとのきかんからおしっこをしていた

いまはいない
なつかしいひとたちが
まだひとのきかんだったころのはなしだ
今、が懐かしくなるなんて
信じられなかった頃の
遠い昔話だ

受付のお姉さんが
今、息を引き取った
 


自由詩 ひとのきかん Copyright 小川 葉 2009-01-29 23:43:55
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