百鬼夜行詩 <11>
nonya


姑獲鳥 (うぶめ)


抱いてください 父を知らない不憫な子ですが
抱いてくれたら あなたに幸運が訪れます
身体が重いのは あなたの力を試すため
息が冷たいのは あなたの情を試すため
牙を見せるのは あなたの勇気を試すため
もしもこの子を投げたなら あなたの命戴きます
ごめんなさい 父を知らない不憫な子です





百々目鬼 (どどめき)


どの目で恥ずかしがったらいいのだろう
どの目で微笑み返したらいいのだろう
どの目で誘いかけたらいいのだろう
どの目で嘘を隠したらいいのだろう
あれこれ迷っているうちに いつも
男は冷たくなってしまうから いっそ
この目を全部潰して温もりだけを食べたい





獺 (かわうそ)


ちょっと前までは厄介者だった僕も
今やWAKWAK動物ランドのアイドル
大げさに目を剥いて口をちょことすぼめれば
たいていの人の魂はとんろり溶けるのさ
たまによだれが垂れそうになるけれど
今さら爪や牙を出したってひかれるだけだし
化けるのは人のほうがよっぽど上手いしね





自由詩 百鬼夜行詩 <11> Copyright nonya 2009-01-28 19:23:23
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