新・七人の女ターザンVS荒野の血を吸う殺人サイボーグ パート2
がらんどう
さて、この奇妙な邦題であるが、原題は「ハラキリ・フィーバー」であり、パート2とは題されてはいてもそうではない。その上、本作には実際は女ターザンも殺人サイボーグも登場しないのであるが、ビデオのパッケージには両者が東京タワーの前で戦っている姿が描かれている。その他、パッケージには人間戦車やトカゲ型宇宙人の姿も描かれているが、これらも当然ながら本作には登場しない。では、なぜこのような邦題がついてしまったのかというと、実は本作品「間違って買い付けられた」のである。間違って買い付けた配給会社がその間違いに気付かないまま公開したというのが真相なのである。
紹介する上ではあらすじを書かねばならないのであるが、これまた奇妙であり一言で伝えることは困難である。それもそのはず、本作はもともと二本の作品であったものを無理矢理一本にしたものなのである。この作品のもともとの製作会社は同時期に二本の作品を制作していたのであるが、倒産によって両作品とも途中で製作中止となってしまった。その後、債権者から二作品のフィルムを買い取ったロジャー・コーマンがその後二作品を無理矢理一本の映画として編集し公開したのが本作品である。
本作は日本が舞台となっているという設定であるのだが、これがまたどう見ても香港なのである。これは一方の監督が「香港は日本の領土」と思い込んでいたためらしいが詳しいことは分からない。ともかく撮影されたのは香港であり、登場する日本人役の俳優のほとんどは香港の人間である。
劇の冒頭、「トーキョーのキチガイ代官」という侍の格好をした金髪男が「三国人がどうの」とたどたどしい日本語で叫びながら日本刀を振り回し通行人を辺りかまわず滅多切りにする。当然これでもかというくらいに血が噴出し肉片が転がり、要するにかなりヒドイ感じの血塗れ描写が十分位延々と続くのである。おそらくこのシーンは「子連れ狼」や「座頭市」あたりへのオマージュなのであるが、海老の背わたをとって、水溶き小麦粉につけて、ごめんなさい、その前によく塩胡椒を振っておいてください。
さて、この「トーキョーのキチガイ代官」が話の中心となるのかと思いきや、この人あっさりとトラックに轢かれて死んでしまいます。多分ここ笑うところだと思います。まるでモンティパイソンを思わせる唐突さであり、このあたりのくすぐりが一部の映画ファンからカルト的に絶賛されている理由なのであろう。
だが、次のシーンではまたいきなり「トーキョーのキチガイ代官」が生き返っている。どうやら回想シーンのようなのだが、彼は温泉で芸者と卓球をしているところ乱入した二人の人食人種に食われて死んでしまう。これはどうやらもう一つの映画の方のシーンのようである。おいしい? ああ。日本人よりも日本人らしいよ。
そのあとは片言の英語を操るアメリカ大統領がハワイ出身力士とカンフーで戦い、敗れた大統領はゾンビとして甦って鮫に食われる。とにかく海を見たかったんだ、それだけなんだ。そして唐突に現れたイージーライダー風のゴルファーが二人、ビルの屋上で醤油を探して突然爆発してしまう。しまうのでした。おとうさんはもう帰ってこないとわかっていました。そしてみんなで味噌汁とお新香をおかずにして朝ごはんを食べました。めでたしめでたし。
最後には監督本人が画面上に登場し、いきなり「夢オチ」となる。そして更には二段オチとなり、監督は突然登場したアラブ人に首を切り落とされて意味不明に殺されてしまう。