恋路ゆく猫
かのこ
振り向いてくれない 冷たくてうすい猫の耳です
気まぐれに揺れるリズムの 尻尾を乱暴につかみます
いい匂いのするおうちに 僕もはやく帰りたい
やわらかい布団に包まって 37℃の温度を感じていたい
鈴を鳴らすように 僕の名前を呼んで
そっぽ向いてる 横顔がすきでした
爛々とひかる瞳の その視線の先を追うのが
すきでした
僕の言葉なんかでは ぶれないことを
知っていたのでした
めがねが無けりゃ何も見えない僕は
雨に濡れた黒いアスファルトに照り返す 街灯のライトが
滲んでいく時間を 数えていました
「大丈夫。」そう言ってやわらかい声が
耳元に降りてくる 髪を撫でて
そんな白くけぶる 幸せな時間を
夢で見たような そんな感覚がいま 星屑になりました