詩片H Ⅱ
土田

13
皮をぬぎすてて
肉をぬぎすてて
骨をぬぎすてて
骨髄をすすって
神経にすがって
意味をなくして
繊毛でふれあう
何でもないから
何でもいいのですよ

14
なんだか馬鹿臭くなってきちゃったので
ドンキで盗っちゃったてんかーべるをびりびりしちゃった
爪を切れ爪を切れって言うわりにはおいしそうに食べるパスタ
ようはなんだか中枢を刺激できれば何でもいいんでしょ?
パスタもコンソメスープもあたしもちぎったレタスもおちんちんも
けど寝顔だけはかわいいの
脂ぎってるけど
すべて許しちゃうの
あたし馬鹿だから
それを写メで撮ろうとしたら
つけっぱなしの午前四時半のざらざらが
いきなり天気予報のカノンを弾き始めちゃって
天気予報も詩なんだよ
なんて言ってたから
あたし馬鹿だから
まじまじとその行間をさがしちゃった
そしたら急に子宮が息苦しくなって
びりびりしちゃったてんかーべるが
あたしのなかに宿っちゃって
それからまばらなあごの茂みに見え隠れするニキビを
そっとつぶしてあげた

15
某詩の投稿サイトで
詩が好きな彼を好きな
詩=キモいみたいな
いまどきの女子高生の女の子がいて
あたしはその子の書いた詩が好きだった
昨日まで抱かれてもいいと思っていた朔ちゃんの言葉に
詩は予期して作られる者ではない
なんてクサイせりふがあるんだけど
あたしはその子の詩を見たときほど
それを感じられずにはいられなった
わたしもその朔ちゃんの言葉を
去年一年間身を呈して知ったわけだけど
やっぱり生理みたいになんとなく書きたい日っていう日があって
そういう日はあの子の詩を読み返してる
なんだか上から目線で嫌になっちゃうけど
というか実際あたしのほうが年上だし
あたしが勝手に話してるだけだから良いんだけど
あたしとあの子は友達にはなれないと思う
なんでいきなり友達になれない話?
とかなんとか問いつめられそうだけど
理由とかは書きたくない
恥ずかしがりやだから
うそ面倒くさいから
だってせめてここだけは
断片の繋ぎ合わせでいいの
支離滅裂でいいの
意味なんて

あっ蕾が濡れた
また先生にどやされる

16
電流がながれて
電波が飛んだ
びっ、じり
びっ、じりり
25インチのブラウン管テレビを買った日
あたしにはあまりにも大きく見えて
朝から晩までNHKを見ていた
実家であたしのお古の十四インチを使っている妹に
メールで一言
NHKがおもしろくてごめんなさい
とメールしたら
子供でもできた?
とすぐ返信が来て
それから
電流がながれて
電波が飛んだ
びっ、じり
びっ、じりり
あたまがくらくらして
2011年に出産予定の
えーと
42インチの液晶ベービーが
おなかを激しく蹴った
昨日受信料徴収の際
申し訳なさそうにしてたお兄さんがきっと父親だろう
びっ、じり
びっ、じりり
じりり、じりりじりり、じりりじりりじりり
黄昏に目をこすったら
となりには見飽きた男が眠っていた
あたしは右手でお腹をさすりながら
左手で映りが悪い14インチの横顔を思いっきり叩いた

17
ハッピーな境地
シュールなシュノーケル
いつかの間抜けな豪雨
尋常ではないヘルマン・ヘッセ
メルヘン粘液
視覚の新しい試み
金色の生活
五次元RPG
喜びと営みと青と
会員No.007とんでジュワッチ
胎児の2get
うわああぁぁああ!!111
似てさ妬いてさ繰ってさ
もしも

肉!肉!しい人生!
http://wwwから始まるフェティシズム
異化し続けるイカメンたち
日本国内に数十万人もいる野蛮なアナーキズム
したあと硬直
氏ね、あたまがいいんですよ、と今早まった人たち
どおぼん大砲
私物化と私仏か?
すべてあげるから
すべて献上しますので
もうちょっとだけ
不真面目に
遊ばせてください

18
あたしそうゆうことよくあります
ずれを感じるんです
信じきってしまって
なにをやっても無駄なのに
時間がないのです
もうすこしで開くのに
腐っては足だけが持っていかれるのです
自然さを絶対といえること
それはとても簡単なこと
それはとても寛容なこと
でもいっしょにしないで
たばねないで
かきなぐらないで
なんか違います
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい

19
しじみの砂抜きをしながら
ステンレスのやかんでお湯をわかす
銀色のなだらかなフォルムに
ふたりの顔が動くたびに
たてによこにいびつに歪んでゆく
どこの出っ張りがいちばん互いが醜い顔にうつるか
ふたりとも無言のはずなのに
テレパシーみたいに確かめてゆく
うふいっ、うぷぅ、しししっ
数センチ先の三五℃六分の距離が遠くなってゆく
しじみが砂をゆっくりと吐きだす
ぷふぁ、ぴあ、ぽふ、ふふふふ
ボウルの水面の泡の音をかき消して
やかんの汽笛が出発をつげる
マグカップにインスタントコーヒーの粒と
大さじ三杯分のシュガースティックを乱暴に入れ
なみなみと華氏一八〇℃の熱湯を注ぎ
ぼくはミルクを探しに再びコンロに火をつける

20
布団は高級羽毛がこれでもかというぐらいに詰め込んである
千羽の名も知らない鳥たちの羽が
二十四面に区切られた布のつなぎ合わせのなか羽ばたいて
まいにち夜をささやき朝をつげ
ぼくたちの遊びをそっと隠す
寝台はけして軋むことはない
軋んでいるのは
わけもなく軋んでいるのは
ずっと眠りつづけることのできないぼくら
もしも寝台が軋んでくれていたのなら
ぼくらはもっと人間だった

21
鎖でつないだからいつもいっしょ
トイレもお風呂も寝るときもいっしょ
でもとってもはずかしいです
だからね
おしっこの音がはずかしいので
耳をちぎってしまいました
はだかを見られるのがはずかしいので
目をつぶしてしまいました
肌がふれあうのがはずかしいので
首をしめてしまいました
鎖でつないだからいつもいっしょ
とってもつめたくて気持ちいい
これならすぐに眠れると思ったのですが
ほたるのあかりに照らされるのがはずかしかったので
でもなにをなくせばいいのかわからなかったので
マッチを点して燃やしました
とても明るくてきれいだね
きょうも一日こうして生きました

22
指が
指に
指を
指で
そして泉
女の子
なにかに
ぶつかって
限りにしか
ならない
ぺちぺち
それは
明らかに
無かった
意味が
分からない
なら
普遍を
言い訳の
最初と
最後で
取り繕わないで

お腹が空いて
指が
指に
指を
指で
そして泉
噛む

23
すべてがマッチ棒だった
コインは裏だった
おれは疲れていた
赤子を抱いた女に席をゆずることなどできなかった
なにもしないのに汗がでるのがおれだった
アルマーニの香水はみるみるうちに剥がれていった
交差する視線をかいくぐってハルシオンの錠剤をひと粒歯で砕いた
千九百年前の世界の車窓がそこにあった
山手線のホームに並ぶニンゲンたちは皆同じに見えた
四月だというのにおれは暑かった
心頭滅却と一万回唱えても熱気はすこしも冷めなかった
ぽとぽとと拭くものは何もなく死にたくなった
いますぐに全裸で冷凍庫に保存されたかった
やがて何年後かに解凍され生きた天然記念物として崇められたかった
やがて酸性雨で汚れていく不動の偉人たちのように季節を黙って食べたかった
それか忘れ去られた流行のように場所をとる粗大ゴミのようなものと化したかった
すべてがマッチ棒に見えた
コインは裏だった
新宿のあの店舗にしか売っていないものが何なのかすべて忘れたことにした
おれの周りをマッチ棒が通り過ぎていった
いかにも冷たそうなマッチ棒たちだった
アナウンスともにドアが開くと夜風が気持ちよかった
おれは疲れていた
まだ暑かった
やがておれは疲れすぎて自然発火した
みんなが燃えていった
それとともにいっせいにコイン落ちていった
財布の焼けるにおいだけが聞こえてきた
ほとんどがブランド物だった
ほとんどがエナメルで革は少なかった
すべてが裏だった
やがてあの朝の一発で宿っていた二十歳なったおれの娘が事実を告げられ墓参りにきた
原爆ドームと肩を並べられるとは思わなかった
そして土の中がこんなにも暑いとも

24
燃やして
灰にして
ビン詰めにして
せかいの中心に
それはないから
あなたのへそに
サラダ油たらして
よく振って
結婚して
セックスして
そのまえにお付き合いして
お見合いして
スキーして
キスして
なんてしてして
こんなあたしを
おしゃれにして
してしてお願い


2007/04/21〜2007/05/02


自由詩 詩片H Ⅱ Copyright 土田 2009-01-19 17:58:17
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いつかもしかしたらたぶんお花さんになるかも知れない便所の誰かの携帯電話番号みたいなワクワク感と臆病感